ドイツで生きる ~Kommt Zeit, Kommt Rat:おすすめの本
ロンブ カトー
筑摩書房
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"14のヨーロッパ系言語と中国語、日本語を、ほとんど自国を出ることなく、純粋に学習という形で身につけてしまった女性の外国語習得術。25年間に16ヶ国語を身につけていく過程と秘訣をつつみ隠さず公開してくれるこの本は、外国語学習にあたって挫折しがちなわたしたちを、必ず目的外国語は身につけられるという楽天主義に感染させてくれます。(訳者あとがきより)"
この本について書こうと思ったきっかけは、akberlinさんのブログで日本人より日本通の詩人で、英語・日本語・イタリア語に堪能だというアーサー・ビナードさんの本を紹介していたからです。その時私もまさに16ヶ国語を自在に操るロンブ・カトーさんの「わたしの外国語学習法」を読もうとしていたところで、「読んだら本の� ��想をご報告します」とお約束したので、せっかくだからブログに書くことにしました。図書館で借りた本や中古で買った本に線がひいてあるのを見ると力が入りすぎているようで恥ずかしいと思ってしまうほうですが、今回は私にしては珍しくたくさん線を引きながらじっくり読んでみました。著者のいうとおり、「本は書き込みで真っ黒にしても、バラバラに分解してもいいのです」から。
どのような40歳の欲求です。
著者のロンブ・カトーさんはハンガリー人。彼女はいわゆる「生まれとか、人生上の偶然のめぐり合わせのおかげで複数の言語ができるようになった多言語所有者」ではなく、「外国語への関心を原動力にして学習を積み重ねた結果、数ヶ国語に通じるようになった外国語習得者」です。1930年代の経済不況のもとで、自己の専門を生かす職を得られず、外国語教師となる決意をするも、稼げる外国語である英語をまずは自分で身につけなくてはならない、そのため独自の学習法を開発するのです。「最良の方法は、ラジオ放送をテープレコーダーに録音し、何度もそれを聞くことです」「理想的なのは、今市場に出回り始めた、ビデオ・レコーダー� �しょう」などの記述には時代を感じます。現在ならばポッドキャストをダウンロードして厚さ数ミリ、手のひらサイズのさらに半分くらいの大きさのMP3プレーヤーを持ち歩いたり、imomoyoさんがブログでご紹介していた超字幕を使って超便利に映画を学習に役立てることができる、などと当時の人が知ったらどんなに驚くことでしょう。
本書は、著者の外国語遍歴にはじまり、多言語に関する論理的な考察、私達が外国語を話す時のメカニズム、通訳にまつわる経験談、著者の博学多識による数々の名言の引用、など読みどころは多々ありますが、ここでは私が実践的に役にたったと思うことについてご紹介することにします。
①わからない単語はいちいち辞書を引かなくてもいい
狂気の嘆願を入力します。ストーカー
学習する言語で書かれた本を読むことをまずはすすめています。本こそが学習の「自家製用具」なのだと。でも、本を読もうにもわからない単語が多すぎて辞書を引いてばかり、そのうち文脈がわからなくなり、数ページで投げ出すという経験をしたことがあるのは私だけではないと思います。著者の以下の言葉には強く納得させられ、また中断していた本を開いてみようか、という気にもなります。
「登場する単語についてことごとく辞書を引く必要などありません。辞書を引くことによって生じる余りにも頻繁な中断で読書への興味が失われることの方が、ずっと怖いのです。犯人を追う検事、刑事あるいは保安官が隠れたのが茨の木のヤ ブの中なのか、山査子(さんざし)の木のヤブの中なのかなどどうでもいいではありませんか。」
そして、「この単語の意味を、わたしは自力で言い当てることが出来た、自力で文章の意味を推し当てられたのだ。この意識下で味わう自己満足こそ、最高の報いです。」すなわち、<成功の過程を体験すること>がいかに大切かを教えてくれます。
②単語帳を作るなら、アルファベット順に秩序立てしないような単語帳を自主制作すること
自分が解放されますそれを行います
私も、単語を暗記するために単語帳を作っていますが、単語はどんどん増えるばかりで一向に頭に入らず。その上膨大な時間を使って単語をカードに書き出してアルファベット順で並べて保存するも読み直すこともしない。そんな味気ない方法よりも、「その単語と出会った時の状況、時間とかその時の出来事、時にはそれを書き込んでいた時のわたしたち自身の気分までが定着」するような単語帳に変えてみました。
③辞書はなるべく最初から大辞典の類を求める。一ヶ国語辞典や詳解辞典の類を使用する。
「小辞典を買ってもたちまち不要になり、いずれ大きな辞典を捜さねばならぬ羽目になります。」また、「2ヶ国語辞典(たとえ� �日・独辞書)で素早く調べた場合よりも、頭を使って記憶をたどって苦労して似たような言葉を推測して1ヶ国語辞典(独・独辞書)で調べた場合のほうが、はるかに効果的で10倍もよく覚えられます。」
④外国語は毎日学習すること。もしまったく時間がないというのなら、最低10分はやること。特に朝学習するのが良い。
毎日学習するというのは大変難しいことですが、10分ならば、特に学ぶ言語を話す国に住んでいる場合は不可能ではないと思います。私は勉強する気になれない時は、「勉強したつもりになる」ために映画をみたり、ドイツ語のジョークの1つでも仕入れて口に出してみたり、外を歩いている時も目に付いた標識や広告を読んだりしています。
その他、「自分はどの程度外国語をしっているのか?自己採点の仕方」という章もあり、客観的に5段階評価を下すことができるのも、なかなかおもしろかったです。
著者は、なぜ外国語を学習するのか?という問いに対して
「わたしたちが外国語を学習するのは、外国語こそが、たとえ下手に身につけても決して無駄に終わらぬ唯一のものだから」
と答えています。また、10の教訓の最後で、
「どんなことがあっても自分は目標を達成出来るのだ、自分は強力な意志力と、類い稀有なる語学的才能を持ち合わせているのだと、固く確信すること。」
と力強く述べています。著者の学習法のとおりに学べば誰もが外国語を習得できるとは思えませんが、� �わたしたち外国語を学ぶ者は皆、共通の目的-さまざまな国の人々を結びつける橋の建設という目的のために貢献しているから」という見解は美しくも感動的で、こんな自分でも外国語の学習を続けてもいいのだ、苦労や努力は必ず報われるのだ、という勇気をもらえました。
なお、訳者がロシア語通訳の故米原万理さんであることも、本書をよりいっそう魅力的にする要因の1つだと思います。
(注)本文中、「太字」の文章は全て本書からの引用です。
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